インド経済:さらに経済低迷させる『ある』政党

インド経済:さらに経済低迷させる『ある』政党

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元ヘッジファンドマネジャーの横森一輝が、世界経済・投資に関してあなたの疑問・質問に答えるポッドキャスティング

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vor 12 Jahren
かつては中国以上の経済成長を期待された 新興国インドですが、その楽観論は今や昔! 断続的な経常収支の赤字から現地通貨 ルピーが急落し、インド経済は低迷しています。 経済が低迷すると政治の転換期ともなりますが、 『ある』政党が頭角を現しています。 インド国民からは期待されている一方、 もしこの政党が政権をとってしまえば インド経済を停滞させるというのが横森の見解です。 インド経済:さらに経済低迷させる『ある』政党   音声ダウンロード(MP3) [12月8日収録]   危機は逃れたが、安全とはほど遠いインド [英フィナンシャル・タイムズ紙 2013年12月6日] インド政府はパニックモードから脱した。今夏、通貨ルピーが急落し、政府が防衛のために効果のない対策を次々と講じた本当に危うい数カ月を経て、インドに不穏な落ち着きが戻ってきた。 ルピーは9月の安値を10%上回っており、株価は底値から15%上昇した。 ムンバイでは、中央銀行新総裁のラグラム・ラジャン氏が白馬に乗ったボリウッド映画のヒーローのように登場した。総裁は金利を引き上げ、在外インド人から投資を引き寄せる策を編み出し、ほんの数カ月間で340億ドルもの資金を集めた。 ラジャン氏の対応と同じくらい重要だと言えるのは、米連邦準備理事会(FRB)が資産購入の早期縮小に関する迷惑な発言をやめたことだ。恐れられていたのは、米国の金利が上昇し始めたら、投機資金がインドから一斉に逃げ出し、危機の新局面を招きかねないことだった。 FRBがいずれ緩和縮小を始めた時に再燃することは考えられるが、危険はひとまず後退した。だが、現状でも、インド経済は明らかにボロボロに見える。確かに経常収支の赤字は縮小したが、財政赤字はまだガンジス川並みに大きい。消費者物価のインフレ率は2ケタに上り、貧困の中で暮らす多くのインド人にとって厳しい問題になっている。 「中国以上の急成長」が叫ばれた楽観論は今は昔 国内総生産(GDP)の伸び率は4四半期連続で5%を下回った。離陸段階にあるはずの貧しい経済にとっては、悲惨なほど低い数字だ。ほんの数年前にインド人たちが興奮しながら中国より速い成長を遂げると話していた夢想的な楽観論は、まるで別の時代の話のようだ。 経済情勢がこれほど厳しくなる前には、インドが目指すべき類の成長について活発な議論が繰り広げられていた。議論の対立を体現していたのが、ノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・セン氏とコロンビア大学の経済学部教授、ジャグディシュ・バグワティ氏の見解だ。 過度に単純化すると、セン教授は、貧しいインド人に目に見える恩恵をもたらさないのであれば、インドの高い成長率は無意味だと主張した。これは健康や教育、栄養、男女平等を得る機会の改善を意味した。これらはいずれも、例えばずっと貧しいバングラデシュと比較した場合でも、インドに低い点数がつく指標だ。 社会指標が改善しないのであれば、何のための成長なのか、とセン教授は問いかけた。 一方、最近『 Why Growth Matters (成長が重要な理由)』という共著を上梓したバグワティ教授は反対に、高度成長は貧困緩和の前提条件だと論じた。 経済のパイを拡大することによって初めて、インドはセン教授が望んでいるものにお金を払うだけの資源を得られるというわけだ。 ある意味では、2人の経済学者の意見の相違は、抗争のような激しさで表現されているとはいえ、重点と順位付けの違いだ。セン教授は成長の必要性に異議を唱えているわけではないし、バグワティ教授は極力多くの人の生活環境を改善するという考えに反対しているわけではない。 高度成長も社会正義もないインド しかし、インドには高度成長も社会正義もない。その結果、セン教授とバグワティ教授は、舵を左に切るか右に切るかで揉めている船長のようになっている。彼らは論争を続けているが、操舵輪は壊れているというのが悲しい現実だ。 もちろん、経済成長が今のパッとしない水準から上向く可能性はある。パラニアッパン・チダムバラム財務相は、成長率は来年度に6%、2015年度に7%となり、それ以降は8%になると予想している。大方の民間エコノミストは、各年度の成長率が財務相の予想より1ポイント低くなると見ている。 だが、たとえ状況が上向いたとしても、インドの経済モデルは以前より不安定に見える。GDPを社会正義に転換できなかっただけでなく、成長の基盤そのものが不確かに見える。 インドは自国を本格的な製造拠点に変えていない。投資は失速した。韓国のポスコが建設するはずだった120億ドル規模の製鉄所を含め、いくつかの外国企業の開発プロジェクトは何年も実ることなくくすぶり続けた。 政府には、影響を受ける社会に対して、そうした開発プロジェクトが地域のためになると説得する正当性もなければ、地域社会の反対を押し切り、開発を推し進める正当性もない。その結果、すべてが宙ぶらりんになる。現状維持の最大の受益者は、本人を除けば誰のためにもならない利益追求を許された身内主義の資本家だ。 パンカジ・ミシュラ氏はニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス誌に寄稿し、高度経済成長は「不平等な社会において、偏狭で身勝手で反民主主義的なエリート層に力を与える」役目を果たしただけだと論じている。そして、今のインドには自慢する高度成長さえない。 世論を二分するモディ氏に期待が集まる理由 これが、来年の総選挙が戦われることになる背景だ。通常ならそんな考えに震え上がるリベラルなインド人さえもが渋々、世論を二分させるヒンドゥー民族主義者のナレンドラ・モディ氏が救世主になり得るという考えを受け入れ始めているのも無理はない。 一部には――多くの場合、不本意ながら――、グジャラート州首相のモディ氏が同州で達成したような成長率を全国レベルで再現できることを期待している人もいる。 「1000回刺されても仕方ないが、『モディ』だ」。次の首相は誰がいいかと聞かれた時、教養のあるインド人女性は劇的な言い回しでこう語った。これは熱狂的な支持とはほど遠い。だが、今のインドに広がる憂鬱な気分を反映している。

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