一人っ子政策の副作用、子どものために奴隷となる中国の親

一人っ子政策の副作用、子どものために奴隷となる中国の親

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元ヘッジファンドマネジャーの横森一輝が、世界経済・投資に関してあなたの疑問・質問に答えるポッドキャスティング

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vor 13 Jahren
中国では人口の急増により1979年から子どもは1人とする一人っ子政策がはじまりました。 一人っ子政策によって中国では人口構造が急変し社会的にも急激な変化が生じています。 子どもが一人しかいない親にとっても子どもに期待は半端なく、 自分の生き甲斐を土返しして子どものために奴隷のような生活をする親が中国の社会問題ともなっているようです。 一人っ子政策の副作用、子どものために奴隷となる親 音声ダウンロード(MP3) [6月25日収録]   子育ての“奴隷”になる1980年代生まれ [日経ビジネス 6月22日] 中国で2010年1月頃に“孩奴(がいぬ)”という新語が生まれた。中国語で「子供」を“孩子”言うが、“孩奴”はこの“孩子”に“奴隷”を組み合わせた言葉で、そのまま訳せば「子供のための奴隷」となるが、「我が子のために懸命に働いて金を稼ぎ、自分の欲望を抑えて奴隷のような生活を送る父母」を意味する。中国では末尾に“奴”を持つ新語が次々と生まれているが、“孩奴”もその系統に属する言葉である。ちなみに、“房奴”は「住宅ローンの返済に苦しむ人」、“車奴”は「自動車のローン返済や維持費の支払いに苦しむ人」、“卡奴”は「カードローンの返済に苦しむ人」を指すが、“孩奴”はこれらに続く新語として位置付けられている。 筆者は2010年1月29日付の本リポート「 子供の教育費のために人生を捧げる 」で“孩奴”の概要を報じたが、それから2年が経過した現在、中国では改めて”孩奴”が話題となっている。2年前のリポートと一部重複する内容もあるが、再度“孩奴”をテーマに取り上げる。 24年間で子供の養育費用は40数倍に増大 2012年6月15日付の台湾紙「世界日報」は北京発の記事「出産・養育費用が24年間で40倍以上に高騰、中国の“80后(1980年代生まれの世代)”は“宝宝”を生む勇気がない」を掲載した。中国では「子供」を“宝宝”という愛称で呼ぶ。子供は大切な宝物として愛(いつく)しむものという伝統的な考え方を示している。それはさておき、その記事は以下のような内容である。 【1】中国では1組の夫婦に子供は1人という家族計画、通称「一人っ子政策」に違反して2人目以上の子供を産む超過出産を“超生”と言うが、金持ちは先を争って“超生”を行うが、一般の庶民はこれとは逆に子供を産む勇気がない。子供の出産・養育費用の高騰で、“80后”の夫婦は「生きるか、子供を産むか」の選択を迫られている。彼らは既に“房奴”や“車奴”だが、もし子供を産んだら“孩奴”にならないはずがない。ある人の試算では、1988年から現在までの24年間で子供の養育費用は40数倍に増大したという。 【2】最近、多数の“80后”ネットユーザーが1年分の子供の養育費をネット掲示板に公表していることが注目を集めている。「5000元(約6万2000円)、良い幼稚園に通うと2カ月でそんなに費用がかかるの」「来年子供を託児所に預けるけど、またもや1000元(約1万2400円)もの出費を覚悟しなくちゃ」といった内容で、それらの多くが「子供の養育は大変だから、子供を産む勇気がない」という趣旨を伝えている。 【3】広東省広州市のあるネットユーザーの計算によれば、広州市で子供が小学校6年生を終えるまでには少なくとも45万元(約558万円)の費用がかかるが、そのうちの8割前後は教育費であるという。 【4】ハンドルネーム“宝宝奴隷”というネットユーザーが、“齦老(親のすねかじり)”で子育てをしている明細をネット掲示板に公表した。月給が3300元(約4万1000円)という彼女は次のように述べている。粉ミルク、衣料品、おむつ、おもちゃなどの日常の支出を除いて毎年の“保母(ベビーシッター)”の費用が数万元(約40~50万円)以上、幼稚園の託児費が1万元(約12万4000円)近く、保険費用が1万元、これに幼児教育やピアノの授業料などの出費がある。その合計は彼女の所得を上回って赤字となるので、夫婦双方の両親から毎年3万~4万元(約38万~50万円)を支援してもらわねばならない。 <注1> <注1>上記の【3】および【4】は上述した2010年1月29日の本リポートでも言及しているが、中国のニュースでは過去の記事をあたかも現在の記事のようにして報じることは珍しいことではない。 出産前後の費用は50万円以上 上記の記事の基になったと思われる2012年5月26日付のニュースサイト「中国新聞ネット」は年代別に例を挙げて「出産前から出産後1年までの費用合計」を次のように報じている。この費用の推移を見ると確かに1988年から24年間で出産・養育費用は40倍に増大している: 【1988年生まれの子供】費用合計:1000元(当時のレートで約3万4400円)以上 義母が長さ1尺で1元(約34円40銭)の綿布を20数元(約700円)で30尺(約10メートル)ほど買って来て赤ちゃん用の衣類、寝具、枕、おむつを作ってくれた。入院分娩費用は300元(約1万300円)。粉ミルクは1袋が7~8元(240~300円)で1カ月に7袋必要だったので、1年間の粉ミルク代は600元(約2万600円)だった。 【2000年生まれの子供】費用合計:9000元(当時のレートで11万7000円)以上 産前の栄養食品と検査費用の合計が1500元(約1万9500円)以上。出産時の医療費、薬代、普通分娩費、入院費が2700元(約3万5100円)以上。もしも、分娩が帝王切開なら病院費用は倍額だった。出産後の衣類、寝具、ベビーバスなどの費用が300元(約3900円)。粉ミルクとおむつは毎月350元(約4600円)で年間では4000元(約5万2000円)。 【2012年生まれの子供】費用合計:4万元(約50万円)以上 産前の栄養食品と検査費用の合計が約5000元(約6万2000円)。出産時の医療費、薬代、検査費、分娩費、入院費の合計が1万元(約12万4000円)。1人しか許されない子供だからということで、最高級の衣類、靴、帽子、おもちゃ、寝具などに3000元(約3万7000円)を使った。粉ミルクは輸入品で1缶300元(約3700円)、毎月3缶必要で年間の合計金額は約1万1000元(約13万7000円)。紙おむつは1パック68個入りで140元(約1750円)の“媽咪宝貝(マミーポコ)”を購入、1カ月に3パック使用するとして年間の合計額は5040元(約6万2500円)。これに途中から雇う予定のベビーシッターの費用毎月2000元(約2万5000円)を加えると、合計は4万元以上となる。 月収の8割以上を子育てに 2010年6月2日に吉林省の新聞「新文化報」に、“長春市”に住む31歳の母親で生後13カ月の女児を持つ劉さんの「1カ月の子育て費用の内訳」が掲載された。2年前の記事ではあるが、劉さんの“孩奴”振りが良く分かって興味深いので、敢えてその全容を示すと下記の通りである(ただし、金額の日本円換算は2010年6月当時のレート:1元=13.3円)。 【子育て費用】 (1)子供の面倒を見てもらう“阿姨(家政婦)”への支払い:1200元(約1万6000円) ・ただし、昼間だけの場合で、まる1日だと少なくとも1600元(約2万1000円) (2)粉ミルク代:1000元(1万3300円)前後 ・国産粉ミルクのメラミン混入事件以降は輸入ブランドを飲ませているので、1缶当たり約130元(約1700円) (3)ベビー食:70元(約1000円) ・魚や野菜のペースト、1瓶6~8元、3日で1瓶 (4)紙おむつ:300元(約4000円) ・輸入物の最高品、1枚4元前後 (5)ワクチン代:100~800元(約1400~1万1000円) ・無料のワクチン注射は基本的にしないので有料 (6)衣服と靴を毎月3~4個購入:200元(約2700円)前後 ・大部分はベビーショップで購入 (7)玩具を毎月2~3個購入:500元(約6700円) ・有名ブランドの毒性のないもの (8)育児用品:120元(約1600円)前後 ・シャンプー、ベビーパウダーなど (9)幼児教育授業料:500元(約6700円)前後 (10)医療費:少なくとも600元(約8000円)以上 ・たまの風邪や発熱の際に、点滴2瓶と輸入薬品の購入 以上の次第で、劉さんの家の子育て費用の平均は毎月5300元(約7万500円)となるわけだが、劉さん自身は長春市にある国有企業に勤め、勤務時間は朝9時から夕方5時まで、月給は3400元(約4万6000円)でホワイトカラーに属する。一方、彼女の夫は国家の事業組織に勤務し、月給は2900元(約3万9000円)。従い、夫婦2人の給与合計は6300元(約8万4000円)となるが、これは決して少ない金額ではない。 子供が出来る前の劉さんは比較的遊び好きで、街をぶらつくのが好きで、“月光族(その月の給料を貯金もせずに使い果たす人)”に属していた。一方、夫は仲間で集まるのが好きで、毎週1~2回はそうした集会に参加し、その度毎に700~800元(約1万円)を使っていた。その2人の生活は子供が生まれたことで一変し、2人は勤務が終わればまっすぐ帰宅するようになった。それもそのはずで、子育て費用5300元が夫婦の給与合計額6300元に占める比率は84%を占め、2人に残された金額はわずか1000元(約1万3300円)しかない。これではかつての“月光族”も「集会好き」も、“孩奴”として子供の成長を楽しむ以外に術はない。記事には劉さん夫妻が実家の両親からどれほどの援助を受けているのかは記載されていなかったが、恐らく何がしかの金銭的支援を受けていたものと思われる。 [...]

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